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ProjectMeltDown

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Ver.White ACT3

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瞳に映る惑星
Ver.White act-3



       武総大学のキャンパス内、自動販売機前。
       照明入る。昼下がり。正樹がいる。
       ベンチに腰掛け、ドリンクを飲んでいる。
       間。適当にぼーっとする。
       喜代美が入ってくる。自動販売機で紅茶購入。


喜代美   あ!

正樹    ・・・え?

喜代美   コーヒー屋さん。

正樹    はい?

喜代美   やっぱり武総大生だったんだ。私ほら、こないだ聞いたじゃない?

正樹    ああ、お客さん。

喜代美   そう、お客さん。へえ、普段からここにいるんだ。

正樹    あの・・・

喜代美   あ、ごめん。私、榎本喜代美。経済学部の1年。

正樹    はあ。

喜代美   隣いい?

正樹    まあ。

喜代美   言っとくけど、これナンパじゃないからね。期待してたらごめん。

正樹    何の用ですか?

喜代美   自己紹介よ。私、あのお店気に入ったから名前ぐらいはね。

正樹    経済学部の?

喜代美   榎本喜代美。見てのとおりの人間。

正樹    美人て言いたいんですか。

喜代美   わかってるじゃない。ありがちないい女よ。で、君の名前は?あと学部。

正樹    長井正樹。工学部。1年です。

喜代美   タメじゃーん。工学部かあ、たまにしか見れないわなー。

正樹    確かに工学部には、こんな人いないですね。

喜代美   こんなび・じ・ん・でしょ。

正樹    そうともいいます。なんか自信過剰ですね。

喜代美   正当な自己表現よ。私、見ため以外のインパクトって、薄くて。

正樹    そうかなあ。で、なにしに来たんでしたっけ。

喜代美   自己紹介。だから正樹くんの。あ、いいや正樹のこと知ろうと。

正樹    あの、勝手に打ち解けるのは勝手ですけど、何か陰謀めいた気配が。

喜代美   私、怪しい?そうよね、これじゃほとんど逆ナンだよね。

正樹    まあ、別に危害を加えてくる様子はないんですけど。

喜代美   君、結構引っ込み思案とか言われない?

正樹    はい?

喜代美   いろんな意味で遠回りな言い回しよ。

正樹    はあ?

喜代美   ずばり、彼女はいないとみた。

正樹    やかましいですよ。

喜代美   そうか、いないか。あのね。さっきそこで見かけててね、気付いたのよ。

      あ、あの店の子だって。そんでね。ほんのちょっと観察したのよ。

      で、「こいつ誰かにフラれたてだな」って。あたり?

正樹    ・・・あまりに鮮やかで返す言葉もない。

喜代美   そういうわけで、話しのきっかけにはちょうどいいかなって。

正樹    いるよね。恋バナだけで生きてるような人間。

喜代美   ちょっと、違うな。私は恋だけで生きてる人間。

正樹    立派だあ。

喜代美   何が。

正樹    恋に生きるとキレイになれるんですかね。

喜代美   いいこと言うわね。でも敬語は却下。

正樹    ああ。

喜代美   「ああ。」ちょっといいな。

正樹    ・・・なんか、いい感じだ。機嫌よくなりそう。

喜代美   そう?じゃあ、細かいこときかせて。

正樹    え、でもここじゃあ。

喜代美   じゃあ、いいとこ連れてってあげる。

正樹     どこ?

喜代美   私、キャンパス内に隠れ場所いっぱい持ってんの。

正樹    授業どうすんの。

喜代美   恋の現実について語るのは一番有意義な時間よ。

正樹    確かに、出る気は薄いなあ。

喜代美   決断は薄皮一枚で決まる。行くよ。


       場面変わる。喜代美、正樹掃け。
       カフェ14。香織と青木がいる。やや、まったりとした昼の喫茶店。


青木     おもしろい子だね。そのカズマって。

香織     でも、アイツ本とに遊び人なんだよ。

青木     騙されないでね。

香織     うん。全然気をつける。ロコツに口説くんだよ。

青木     香織ちゃんも口説かれる年ごろなんだね。

香織     でも、相手違ううう。

青木    香織ちゃん、未熟者だね。

香織    世の中うまくいかないもんよね。私も店長くらい大人だったらな。

青木    なるもんじゃないよ、大人なんて。

香織    そうかなあ?

青木    嘘に慣れて、真実に疎くなる。ああ、真っ黒。

香織    辛そうだね。

青木    だから、急いで大人になんかならなくていいよ。香織ちゃんのペースでね。

香織    うん。でもね、状況じれったくて。

青木    待つのも大事だよ。まず、彼は気付いてないし。

香織    サイテーだよね。あんだけアピールしてんのに。で、違う奴についてって、私もサイテー。

青木    よしよし。香織ちゃん悪くない。

香織    やってらんないなー。

青木    時間かかるもんだし、しょうがないよ。

香織    あれ?

青木    どうかした?


       美穂が入ってくる。


青木    いらっしゃい。今日はどうしたの?

美穂    ちょっときて下さい。

青木    どうしたの?

美穂    いいから来て!

青木    べつにいいけど、ここじゃダメな話?

香織    そーだよ。別に私気にしないよ。

青木    香織ちゃんに聞かれたくない話?

美穂    いや、その。結局香織にも言うんだけど。

青木    とりあえず、話を聞こうか。

美穂    あの、今後のことについての話があるんです。

青木    あ。就職の話?

美穂    就職と言えば就職・・・といえなくもないです。

青木    ・・・香織ちゃんは席をはずした方がいいかもねえ。

香織    そうですか?

美穂    いい!ここで話する!

香織    何をテンパってるの?お姉ちゃん。

美穂    はっきりしてよ!(青木をビンタ)

二人    え?(青木と香織)

美穂    家庭は幸せじゃなきゃいや!

青木    意味がよくわからん。

香織    もしかしてお姉ちゃんが天然かいう話は本当だったんだ。

青木    いままでその節はなかったのにね。

美穂    なんの話してるのよ。わたしどうしたらいいかわかんないじゃない。

青木    まあ、落ち着いて。

美穂    落ち着いても落ち着かなくても私は私よ!

青木    だめだ。完全によくわからなくなっている。

香織    どうしたの?お姉ちゃん。

青木    たぶん、誰かと結婚の話があるんだけど・・・

香織    あるんだけど?

青木    もしかしたら僕のことじゃない?

香織    脈絡ないじゃない。

青木    そうだよね。でも、この雰囲気は僕が悪者のようなんだけど。

美穂    悪い人なんかじゃない。だから私も覚悟する。

      この子と三人で仲良く暮らすのよ!(腹を撫でる)

      私、待ってるから(去る)

香織    もしかして、店長とお姉ちゃんてつきあってたの?

青木    全然。というか、絶対に思い込みだと思う。

香織    どうすんの。

青木    あー。何を勘違いしてるのかわかんないけど、両思いみたいだし、話はしてくるね。

香織    でも、どうしたらにににに妊娠?みたいな。

青木    思い込みだと思うんだよね。

香織    私どうしよう?(不安)

青木    香織ちゃんはいつもどおりでいいよ。

香織    ほんとに。(回復)

青木    うん。全部僕がなんとかするから。

香織    で、お姉ちゃんはどうなるの。

青木    仕事おわったらお家いくよ。家の人たちいるよね。

香織    店長。なにげに落ち着いてるね。

青木    言ったでしょ。大人だって。


       青木、何か取りにいく。


香織    お姉ちゃんの恋がいきなり実りました。

      普通なら大騒ぎになる出来ごとがお姉ちゃんのまわりだと、のんびりとした感じになります。

      私には家族がふえることになりました。


       香織、反対側にはけようとする。
       ふと、また客席をみる。


香織    そういえば。私と正樹には何もありません。


       で、去る。
       和馬と鷹宮がいる。
       鷹宮は座っている。和馬は電話をかけている。


和馬    あ?喜代美?どしたの?

      べつに。あ、今日来ないでくんない?

      いろいろあるから。・・・ちょっと、仕事手間取りそうでさ。

      そんなことお前が気にすんなよ。いいから、いいから。え?んなこたねえよ。馬鹿、愛してるって。

      んじゃ、明日な。(電話切る)

      じゃ、はじめマース!


       和馬、遠くを見る。


和馬    人を愛することが いつのまにか 彫刻のようになる

      固くなる目の裏 涙流せるほど ハート揺らすものなくて

      叫んでも意味はない 貫けぬこの仮面

      ただ ゆらぐほどの この季節に浸りたいだけ

      目に見えぬ モノにいつか流れ 身を委ねて

      だから この姿 溶けるのを待つ

      季節の風に溶けるのをまつ

      ・・・いまいちだな。

鷹宮    以上?

和馬    以上ッス。

鷹宮    うーんそうねえ。微妙っちゃ微妙ヨネ。あんたに聞くのも阿呆らしいけど。勉強とかはしてる?

和馬    いえ。ナッシング!ゴーゴー!

鷹宮    あー別に学校の勉強なんかどーでもいんだけど、いいものにもうちょっと触れないとねえ。

      って、いっつも言ってるよなあ。

和馬    スンマセーン。

鷹宮    わかってる。わかっているのさ、オイラの仕事ってか。

      そおねえ。里子にでもだすか。

和馬    まじスか

鷹宮    意味なく驚くのよね、この種族は。

和馬    で、俺はどーなるんすか?

鷹宮    ひとまず私がなんか持ってくるわ。あ、ちょい待て?

      これ読んどけっつうか何回か読め。

和馬    ういー。・・・これ切ねえ。

鷹宮    いいの持ってくるからそれで繋いで。

和馬    ういーす。

鷹宮    本当にわかってんのかあ?

和馬    もうめっさ大丈夫。オラオラ状態。

鷹宮    ノリだけだよなあ。

和馬    のりー。(とてもゆったり)

鷹宮    ・・・。

和馬    微妙にシュール、不思議な生き物。

鷹宮    だろうけど、なんなんだろうな、お前。


       別の場面。


正樹    その和馬ってなんだか一本切れてるよね。

喜代美   ノリと知性が複雑にからみ合ってるのよ。条件反射でいろんなことしてるみたいだしね。

正樹    ノリと知性って同居できんの?

喜代美   いや。いるんだからしかたないじゃない。

正樹    ああ、そうだよね。あー掴めねえ。

喜代美   あー、やっぱり。人間観察面白いよね。

正樹    そっか、俺って人間観察好きなのか。

喜代美   とりあえず沢山詰め込むタイプだよね。

正樹    ・・・で、放出できないんだよなあ。

喜代美   あれでしょ、何考えてるかワッカンナイとか、反応鈍いとか言われない?

正樹    ワカンナイとはいわれるけど鈍いとは言われないなあ。

喜代美   ニブオ君は最近珍しいよね。

正樹    知らないよ。・・・あ?ニブとブニって何かにてるなあ。

喜代美   ブニ?

正樹    ブーニーってさっきの美穂さんに言われたんだけど、もしかして鈍いって意味かなあ。

喜代美   鈍いからブーニーかあ。なんだろうその表現。

正樹    あの人、時々不思議な人だから。

喜代美   うわー。未練がましいー。

正樹    あーああ。どうなるんだろう俺。

喜代美   しっかし、私と長井ってえらく違う存在ね。

      片思いフェチの長井正樹、モテまくりの榎本喜代美。

      彼女のいない長井正樹。彼氏いる榎本喜代美。尊敬するなあ、長井正樹。

正樹    何が?

喜代美   どうやったら片思いできるんだろう?ってね。

正樹    とりようによっては喧嘩売ってるみたいに聞こえるよ。

喜代美   いやあ。でも尊敬。私の場合好きかもと思ったら、くっついてるもん。

正樹    こうやって、彼氏じゃないひとと話していて怒られたりしないの?

喜代美   この組み合わせでくっつくなんてありえないしねえ。絶対に怒られないとおもう。

正樹    ・・・。

喜代美   どしたの?

正樹    うん、複雑。

喜代美   組み合わせの話?

正樹    そうとも言う。

喜代美   まあ、いろいろあるとは思うんだけど、結局のところみんな相性がものをいうじゃない?

      つり合うのもいればつり合わないのもいる。ま、私の人生経験からいえばね。

正樹    そうかなあ。

喜代美   異論があるなら事例を持ってきなさい。そしたら、恋愛の達人喜代美さんが研究材料にする。

正樹    何がありで、何が例外なのかわかんないなあ。

喜代美   そっか、まだまだ話したりないよね。

正樹    まあねえ。

喜代美   正樹って、いつもさっきのとこいる?

正樹    一応学内にはいる。

喜代美   よし、じゃあまた話しかけるね。

正樹    あれ?帰るの?

喜代美   うん。お昼約束あるんだ。

正樹    あーあ。午後は講議でるよ。

喜代美   えらーい。

正樹    喜代美もえらくなれよ。

喜代美   私はえらくなんかなりたくないようだ!じゃ、またねえ!

正樹    ん。じゃあね。

       喜代美、颯爽とはける。

正樹    美穂さんを忘れようとした心の穴に、喜代美はすっと入ってきた。

      じぶんでもまさかとは思うけれど、脳裏に浮かぶあの笑顔に、僕はただため息をついている。

      喫茶店のガラスの外には喜代美みたいな格好をした人がちらほらと歩いていて、

      あのなかの誰かが喜代美なのかなと期待する。

      「もしかして」と思うたびに、緊張している自分がいた。

      でも、喜代美はいつも例の彼と歩くのだという。

      届くことのない思い。だからずっと黙っていようと思う。

      ただ思うだけなら、だれからもあれこれ言われない。

      もうじき冬。肌は寒いけれど、心はあたたかい。

Ver.White 第4場へ続く

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